STORYストーリー

第5話 不穏ふおんな足音 前編(1)

ミオアイコン

「・・・」(私は・・・どうすべきなのだろう・・・)

木の上で何かをなやんでいる様子のミオを遠くからながめていたナイトはヴァン達にたずねる。

ナイトアイコン

「なぁ、ミオは何をそんなになやんでるんだ?」(話しかけづらいし・・・)

ヴァンリートアイコン

「知らんな・・・」

チェリーアイコン

「私にもわからない・・・」

ナイトアイコン

「そっか」(・・・ずっと何も食べてないけど・・・腹減らないのかな・・・)

ヴァンリートアイコン

「・・・」(言えない・・・)

チェリーアイコン

「・・・」(・・・置いていくかなやんでるなんて・・・)

するとナイトは何かをひらいたようにどこかへ走って行ってしまった。

チェリーとヴァンリートアイコン

「・・・???」(何だろ・・・今の・・・)

それからしばらくして大きな荷物を持って帰ってきたナイト・・・。

チェリーアイコン

「・・・おかえり?・・・で何持って帰ってきたの?」

ドスっと地面に置いた荷物の中身は・・・。

チェリーアイコン

「これ飯盒はんごうだ!」

ナイトアイコン

「おにぎりでも作ろうと思って・・・」(って言うより他に作れるだけの材料が残ってなかっただけだけどな・・・)

ヴァンリートアイコン

「だが何故なぜ、急におにぎりを作ろうと思ったんだ?」

ナイトアイコン

「いや、朝からずっとあんな感じだし・・・」

ナイトアイコン

「会ってから結構見てるけど、ご飯とかほとんど口にしてないし」

ナイトアイコン

「食べたら少しは元気になるかと思って・・・」

ヴァンリートアイコン

「そうか・・・」(飯の問題では無いと思うが・・・)

チェリーアイコン

「ナイトは優しいね・・・」(ずっと一緒にいてあげて欲しいけど・・・本人がね・・・)

チェリーアイコン

「でも、火はどうするの?」

ナイトアイコン

「あぁ、それなら大丈夫」

ナイトアイコン

「俺、火起こすの得意だからさ」

そう言って火打ち石を見せながらナイトは笑った。

チェリーアイコン

「火打ち石・・・」(このご時世に火打ち石で火を起こせるボーイがいるとは・・・)

チェリーアイコン

「ナイトはある意味、絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅだね」

ナイトアイコン

「???」(どういう意味だよ・・・それ)

ヴァンリートアイコン

「他の地域では火打ち石はもうあまり使われていないかもしれんが、この土地ではずっと火打ち石で火を起こしていたからな」

ヴァンリートアイコン

「火打ち石で火を起こせるのはここじゃ普通だ」

カチン、カチンと火打ち石をぶつける音が響いている。

チェリーアイコン

「へぇ〜」

ナイトアイコン

「ついた!」

チェリーアイコン

「はやっ」(これ普通?早くない?・・・絶対早いよね)

ナイトアイコン

「これをここに・・・」

手際てぎわ良く準備を済ませたナイトにチェリーがたずねた。

チェリーアイコン

「ナイトは料理得意なの?」

ナイトアイコン

「まぁ、苦手って訳じゃない・・・ってくらいだな」

ナイトアイコン

「俺、親父と2人暮らしだったからさ、料理の一つぐらいできるようになれってきびしく仕込まれたんだ」(2年ぐらいの間だけど・・・)

チェリーアイコン

「2人暮しだからって問題なのかな・・・」(ミオは作らないしね)

ミオアイコン

「・・・」(どう考えても・・・私といれば危険が増える・・・)

ミオアイコン

「・・・」(ん・・・そもそも悩む余地よちなど無かったはず・・・私は何を迷っている?)

ナイトアイコン

「〜い、ミオ?」

ミオアイコン

「ん?この声って・・・」

声のする方に視線を落とすと木を見上げるナイトの姿が・・・。

ナイトアイコン

「朝から何も食べてないだろ?とりあえず食べないと身体に悪いぞ」

ミオアイコン

「・・・・・・おにぎり!?」

ミオアイコン

「・・・そんなものどこにあったんだろ・・・」

そう言い木の上から飛び降りたミオ。

ナイトアイコン

「・・・!!」(そこ飛び降りるのか!?)

少しあせるナイトを尻目にストっとナイトの前に着地したミオ。

しかし、その着地した一瞬いっしゅん、傷の痛みで顔がゆがんだように見えたがすぐに何も無かったようにナイトに声をかける。

ミオアイコン

「で、おにぎりなんてどこに・・・」(傷の修復が間に合ってない・・・)

ナイトはその一瞬いっしゅんの表情を見逃さなかった。

ナイトアイコン

「・・・」(今のって・・・)

ミオアイコン

「・・・私の顔に何か・・・」

ナイトアイコン

「さっき着地した時、一瞬いっしゅん痛そうな顔してたよな?」

ミオアイコン

「気のせいじゃない?」

そう言い軽く流そうとしたミオ。

ナイトアイコン

「何で・・・ずっと我慢がまんしてるんだよ・・・痛い時くらい痛いって言えばいいのに・・・」

ミオアイコン

「・・・?」(心配してくれってるの・・・かな?でも・・・)

ミオアイコン

「・・・?」(そう言っている貴方あなたつらそうに見えるのは何故なぜ?)

ミオアイコン

「別に我慢がまんなんてしてないよ、私は普通・・・」

ミオアイコン

「でも、心配してくれて・・・ありがとう」(何を心配されてるか分からないけど)

ナイトアイコン

「・・・あんま無理するなよ・・・」(何で隠すんだろ・・・俺、そんなに信用ないのかな・・・)

そんな2人の姿を見ていたチェリー達は口をそろえてつぶやく。

チェリーとヴァンリートアイコン

「素直じゃないなぁ・・・」

ヴァンリートアイコン

「ミオはどうしてあんなに自分の感情を押し殺しているのだ?」

そう小声でチェリーにたずねるヴァン。

チェリーアイコン

「いや・・・多分、ミオは別に自分が我慢がまんしてるつもりがないんだよね・・・素直じゃないだけの可能性もあるけど・・・」

チェリーアイコン

「ミオにとっては痛いとかつらいとか口に出さないのが日常、だから自分が我慢がまんしてる認識はサラサラないんだよ」(そもそも助けを求める相手もいないし・・・)

ヴァンリートアイコン

「いったいどんな育ち方したのだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「そういえば・・・ミオの傷の治りが早いのは分かるが、どれくらいの怪我けがだったんだ?」

チェリーアイコン

「あの木片は内臓を貫通してた・・・正直よく立ってたと思う・・・」(普通の人間ならもうこの世にはいないかも・・・)

ヴァンリートアイコン

「・・・」(私が今見てるのは・・・実は亡霊・・・なんてことは・・・)

チェリーとヴァンがそんな話をしている間も。

ミオアイコン

「私は別に無理はしてない」

ナイトアイコン

「どう見たって、絶対無理してるだろ」

ヴァンリートアイコン

「・・・」(まだ言ってたのか?)

チェリーアイコン

「・・・」(まだ言ってたんだ・・・)

お互いの主張を曲げずにいる2人を見兼みかねたチェリー達がけ寄る。

チェリーアイコン

「ミオ・・・それくらいにしなよ・・・ナイトの主張は間違ってない・・・ミオが無茶が多いのは確かだよ・・・」

ミオアイコン

「・・・」(私は別に・・・)

ヴァンリートアイコン

「ナイト、お前もそれくらいにしろ」

ヴァンリートアイコン

「ミオにも事情があるようだからな・・・」

ヴァンリートアイコン

「まぁ、どうしても気になるのなら・・・話てくれそうなやつに聞くのも手だろうな」

そう言いながらヴァンはチェリーの方をチラッと見た・・・。

チェリーアイコン

「何でソコ私を見る・・・」

ヴァンリートアイコン

「気のせいだ気にするな・・・」

チェリーアイコン

「気にするし普通!」

そんなチェリーを素通りしヴァンはナイトに耳打ちした。

ナイトアイコン

「・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・女性にあまりしつこくすると嫌われるらしいぞ・・・」

ヴァンに耳打ちされたナイトの表情が少しくもった・・・

ミオとチェリーアイコン

「・・・??」(何が起こった?)

第5話 不穏ふおんな足音 前編(2)

ナイトアイコン

「・・・」(それはそうかもだけど・・・)

ヴァンリートアイコン

「・・・」(思った以上に効いてるな・・・しかし、ナイトは分かりやすくて面白いな・・・)

あまりのナイトのへこみように思わずヴァンにたずねるミオ。

ミオアイコン

「ヴァン・・・いったい何を言ったの?何だか・・・暗いオーラが出てる気がするんだけど・・・」

ヴァンリートアイコン

「こっちの話だ、まぁ・・・あのへこみっぷりは予想以上だったが・・・」

ヴァンリートアイコン

「あの感じなら復活まで時間がありそうだ・・・ミオ、お前はナイトがおにぎりを何故なぜ作ったか知りたがっていただろう?」

ヴァンリートアイコン

「ちょっと耳を貸せ」

ミオアイコン

「・・・・・・」(・・・そんなにも気にかけてくれていたのね・・・)

ヴァンリートアイコン

「と、いう訳だ」

ヴァンリートアイコン

「ミオ、お前に食ってかかるのも心配するがゆえだ・・・許してやってくれ」

ミオアイコン

「別に私は最初から怒っていない・・・」

ミオアイコン

「ナイトは・・・優しすぎる・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・・・・思ったより復活が遅いな・・・悪いがナイトに声をかけてやってくれないか?」

ミオアイコン

「・・・何故なぜ?・・・私?」

ヴァンリートアイコン

「細かい事は気にするな、いていうなら・・・それがナイトにとっては一番いいからだ」

ミオアイコン

「・・・」(それ説明になってない・・・)

疑問を感じつつも声をかけることにしたミオ。

ミオアイコン

「ナイト、あの・・・」(こういう時なんて言っていいのか・・・分からない・・・)

ナイトアイコン

「・・・?」

ミオアイコン

「ヴァンに聞いたんだけど・・・おにぎり・・・私のこと心配して作ってくれたんだよね・・・」

ナイトアイコン

「・・・まぁ」

ミオアイコン

「あの・・・心配してくれて・・・ありがとう」

そう言いながら少し照れ臭そうにミオは微笑ほほえんでいる、ナイトはそんなミオの表情に少しおどろいているようだ・・・。

ナイトアイコン

「別にいいよ、そんなこと気にしなくても・・・」

そう言ってナイトも照れ臭そうに笑っている・・・。

そんな様子を見ていたチェリーはヴァンにたずねる・・・。

チェリーアイコン

「最初から狙ってたの?」

ヴァンは空を流れる雲をながめながら答える。

ヴァンリートアイコン

「さぁな・・・私は気まぐれに吹く風みたいなものだからな、適当に過ごしているだけだ」

チェリーアイコン

「・・・」(案外・・・)

チェリーアイコン

「・・・計算高いよね・・・」

そう言われヴァンは軽く鼻で笑った。

ヴァンリートアイコン

「お前ら、そんな所でのんびり話してるとおにぎりが干からびるぞ」

ミオとナイトアイコン

「干からびるって・・・?」

すると、バサバサっという音を立ておにぎりの前で羽ばたいている。

ナイトアイコン

「何でそんなところで遊んでんだ!?」

ミオアイコン

「ヴァンって悪戯好いたずらずきだったの?」

ミオアイコン

「って、ちょっとその風止めて!本当に干からびるから!」

ナイトアイコン

「・・・・・・ちょっと・・・固くなってる」

ヴァンリートアイコン

「・・・」(少々やりすぎたか・・・)

チェリーアイコン

「・・・」(ヴァン・・・もう少し別の方法があったんじゃないかと思う・・・)

チェリーアイコン

「・・・」(案外・・・ヴァンも不器用なのかも・・・)

ナイトアイコン

「うーん、ちょっとこれは食べにくいかも・・・」

そう言っているナイトの横で・・・

ミオアイコン

「そんなことない・・・すごく・・・美味しい」

ミオアイコン

「今まで食べたどんなものより美味しい・・・気がする・・・」

おにぎりを食べ終えたミオはナイトにたずねる。

ミオアイコン

「ナイト・・・聞きたいことがあるんだけど・・・」

ミオアイコン

「何でそんなに他人ひとの心配ばかりしているの?」

その質問に当然のように答えた。

ナイトアイコン

「何だ、そんな事か・・・友達を心配するのは当たり前だろ?」(他にも理由はあるけど・・・)

ミオアイコン

「友・・達か・・・」(何かおにぎりが美味しかった理由わかった気がする・・・)

ミオの目から一雫ひとしずく涙がこぼれ落ちた・・・。

ナイトアイコン

「ど、どうしたんだよ急に」

ミオアイコン

「ごめん、大丈夫・・・ちょっと目にゴミが入ったみたい・・・」(嬉しかったのか?・・・私は・・・)

その様子を少し固くなったおにぎりを食べながら見ていたチェリー。

チェリーアイコン

「ミオ・・・」

チェリーアイコン

「・・・」(あの2人もうずっと一緒にいればいいと思う・・・)

そんなチェリーの視線にミオが気づいた。

ミオアイコン

「チェリー・・・なんか余計なこと考えてない?」

チェリーアイコン

「何でもない!何でもないよ!」

そう言い残しチェリーは激走げきそうする・・・。

ミオアイコン

「逃げた・・・」(今度しっかり聞いとかないと・・・)

ヴァンリートアイコン

「・・・」(チェリー・・・お前は分かりやすいにも程があるぞ・・・)

そんなことを思いながらヴァンは無言でおにぎりを食べていた。

ヴァンリートアイコン

「・・・」(しかしおにぎり・・・って美味い・・・)

そんなヴァンのもとへナイトがやってきた・・・。

ナイトアイコン

「ヴァン、お前・・・あのおにぎり全部食べたのか?」(固いのばっかり結構あったと思ったけど・・・やっぱ胃もデカイから足りなかったのか・・・?)

ヴァンリートアイコン

「おにぎりを固くしてしまったのは私だからな・・・」

ナイトアイコン

「それを気にしてあんなに食べてたのか・・・そこまで気にしなくて良かったのに・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・」(底無しの善人か・・・お前)

ミオアイコン

「あれ、あのおにぎり全部食べたの?」

ナイトアイコン

「・・・あれ?服着替えたのか?」

ヴァンリートアイコン

「・・・?、ぱっと見変わった様には見えないが・・・」

何の事だか分からない様子のヴァン・・・。

ミオアイコン

「よくわかったね・・・服のデザインとか全然変わってないのに・・・」

ナイトアイコン

「だってさっきまで着てた服、少し血の痕が残ってたし・・・」

ナイトアイコン

「それが綺麗きれいさっぱり無くなってたら気づくだろ?」

ミオアイコン

「・・・よく見てるのね・・・一応この服血が目立ちにくい方なんだけど・・・」

ナイトアイコン

「でもいつの間に着替えたんだ?全然気付かなかった・・・」

ヴァンリートアイコン

「いつ着替えてたか知ってても問題になると思うぞ・・・」

ミオアイコン

「まぁ、それは確かに・・・」

ナイトアイコン

「・・・どういう問題?」

ヴァンリートアイコン

「フッ、今のお前には関係なさそうだがな」

ナイトアイコン

「・・・」(全然意味わかんねー・・・考えるの止めよう、答え出そうにない・・・)

ナイトアイコン

「そういえば・・・ずっと気になってたんだけど」

ナイトアイコン

「何でミオは魔族あんな奴らと戦ってるんだ?」

ミオアイコン

「理由?理由か・・・そうね・・・いていうならただのくされ縁」

ナイトアイコン

くされ縁って前にも言ってたよな・・・やっぱりそんなに前から戦ってるのか・・・?」

ミオアイコン

「それなりに長いと思うけど・・・」(ある意味では貴方あなたが生まれる前からの付き合い・・・だなんて言えないし・・・)

ナイトアイコン

こわいとか・・・思った事ないのか?」

ミオアイコン

こわい?・・・」

ミオアイコン

「ない事はないかな・・・だけど私がやめてしまったら犠牲者ぎせいしゃも増え続ける・・・」

ミオアイコン

「それに・・・こわいと思っていたとしても相手は止まらない」(それに・・・今一番おそろしいのは・・・)

ミオアイコン

「・・・」(私自身・・・敵を躊躇ちゅうちょせず斬れる自分自身の方が・・・ある意味こわい・・・)

ナイトアイコン

「それって・・・どんなにこわくても、やめたくてもやめられないって事だよな・・・」

何故なぜか思い詰めていそうなナイトに申し訳なさそうにミオが口を開く。

ミオアイコン

「・・・・・・あの・・・私何か傷つけるようなこと言った?」

ミオアイコン

「もしそうだったら・・・ごめん・・・」

ナイトは思いも寄らない言葉におどろいたように答える。

ナイトアイコン

「別にそういう訳じゃ・・・!でもどうしてそんな事思ったんだ?」

ミオアイコン

「・・・え?それは・・・」

第5話 不穏ふおんな足音 中編(1)

少し言いづらそうにミオは答えた。

ミオアイコン

「ここ1年くらい、私は普通の人と話したことが無かったから・・・」(元々話すの苦手だし・・・)

ミオアイコン

「正直どう会話していいのかわからないし・・・」

ミオアイコン

「だから、ひょっとしたら傷つける事を言ってしまっているかもと・・・」

ナイトアイコン

「別に傷つくようなことなんて言われてない」(けど・・・どうやって生活してたんだろう・・・)

そう優しく笑いながら答えたナイト。

ミオアイコン

「それなら・・・良かったけど・・・」

ミオアイコン

「それじゃ・・・私は用事があるから少し外すね・・・」

そう言い残しミオはけて行った・・・。

ヴァンリートアイコン

「あれは・・・相当重症だな・・・」

ナイトアイコン

「あぁ・・・思った以上に・・・」(1年くらい話をしていなかったって・・・)

ヴァンリートアイコン

「お前、アレ・・・助けになれる自身はあるのか?」

ナイトアイコン

「・・・・・・」

ナイトアイコン

「助けになるような事が・・・俺にできるかは分からない・・・」

ナイトアイコン

「だけど!俺にできる事はしたい・・・」(ただそう思った・・・)

ヴァンリートアイコン

「まぁ、お前らしい答えだな・・・」

ヴァンリートアイコン

「だが、思っている以上に傷は深そうだぞ・・・」

ナイトアイコン

「わかってるよ・・・そんな事・・・」

ミオアイコン

「・・・あの、さっきから2人で何をコソコソ話しているの?」

背を向けて話し込んでいた2人にミオが声をかけた。

ナイトアイコン

「うわ、いつの間に!?・・・用事は?」

ミオアイコン

「一応用事が済んだから帰ってきたんだけど・・・」(そう、用事も・・・終わった・・・)

ミオアイコン

「帰ってきたら2人がコソコソ話してるから・・・」

ミオアイコン

「で?何の話してたの?」(・・・やっぱり西の方から・・・何か感じる・・・)

ナイトアイコン

「あっ、いや・・・それは」

返事に困るナイト、そこにヴァンが割って入った。

ヴァンリートアイコン

「次の目的地の話だ・・・」

ヴァンリートアイコン

「元々この森は西にあるレイテル帝国を目指す旅人がよく通っていくからな・・・」

ヴァンリートアイコン

「お前らもそこに向かっていたのでは?という話をしていた」

ミオアイコン

「レイテルは近辺で失踪事件しっそうじけんが増えてるって聞いたけど・・・」

ヴァンリートアイコン

「そういえば・・・ミオ、このあいだ・・・レイテルだったらここから近いからナイトと一緒にいけるのでは?っとか言う話をしていたような気が・・・」

ミオアイコン

「な・・・何をいきなり・・・」(何でチェリーと2人で話てたことを・・・と言うより内容が少し変わってるし・・・まさかわざと・・・)

ヴァンの言葉を聞いたナイトが少し反応した・・・気がした。

ミオアイコン

「・・・」(心なしか目が・・・期待に満ちてる・・・あんな目で見られたら断りづら過ぎる・・・)

ミオアイコン

「・・・」(でもここで私が折れたら・・・)

ミオアイコン

「ごめん・・・やっぱり一緒にいけない・・・」

ナイトとヴァンリートアイコン

「・・・」

ナイトアイコン

「どうして・・・」

ミオアイコン

「ずっと魔族まぞくと戦ってきた・・・色々、理由はあるけど」

ミオアイコン

「私は普通より魔族達あいつらに狙われやすいの」(・・・色んな意味で私は目立ちすぎている・・・)

ミオアイコン

「そのうち今よりも強くて凶悪な奴がやってくる事もあると思う・・・そうなれば確実に殺されてしまう」

ミオアイコン

「・・・」(できる事なら・・・今からでも平和に生きて欲しい・・・)

「確かに俺はまだ弱いけど、もっと強くなれば・・・!」

ナイトアイコン

「・・・」(ナイト・・・)

くやしそうに言うナイトの言葉を無言で聞いていたミオ、そこへ両手にいっぱい木の実を抱えたチェリーが戻ってきた・・・。

チェリーアイコン

「皆んなで木の実食べ・・・?」(え・・・何この空気・・・)

何かを感じ取った様子のミオが再び口を開く。

ミオアイコン

「!・・・私・・・もう行く・・・時間がないの・・・」

あまりの出来事にチェリーは抱えていた木の実を地面に落としてしまった・・・

ミオアイコン

「チェリー、貴女あなたはナイト一緒に・・・」(チェリーなら・・・)

チェリーアイコン

「どうして・・・こんな事に・・・?」

チェリーが状況を理解できない間に・・・。

ミオアイコン

「優しくしてくれて・・・ありがとう」

そう言い残しあたりを一瞬いっしゅん包んだ煙と共に姿が見えなくなってしまった・・・ミオが姿を消した時に現れた桜の花びらが風に乗りどこか悲しく舞っている・・・

その花びらを手に取り見つめるナイト・・・。

ナイトアイコン

「・・・」(どうして急に・・・)

ヴァンリートアイコン

「・・・」(ミオの性格なら断り切れずに行動する事を選ぶと思っていたが・・・一体何がそこまで・・・)

ヴァンリートアイコン

「チェリー」(・・・時間がないと言っていたな・・・)

チェリーアイコン

「ミオには私はもう必要ないって事なの?」

はげしく動揺どうようし声の届かない様子のチェリー。

チェリーアイコン

「ぎゃふ」

そんなチェリーをヴァンがあしで軽く押さえつけた。

チェリーアイコン

「いきなり何するの!」

ヴァンリートアイコン

「いいから私の話を聞け!」

ヴァンリートアイコン

「ミオがる前、確かに「ナイトと一緒に・・・」と言っていた、だがあれは必要ないからと言う意味ではないはずだ・・・」

ヴァンリートアイコン

「もしそうなら・・・契約けいやくそのものを解消すれば良かった話だ」

チェリーアイコン

「何か別の理由があるってこと・・・?」

ヴァンリートアイコン

「いなくなる前に何かいつもと違う事はなかったか?どんな些細ささいなことでもいいから思い出せ」

チェリーアイコン

「えっ・・・いきなり思い出せって言われても・・・」

チェリーアイコン

「そういえば・・・少し前にあっちのお墓の前にいたような・・・」

ナイトアイコン

「朝作ったあの墓で・・・?」

ヴァンリートアイコン

「確かに気にはなるな・・・行ってみるか?」

ナイトアイコン

「あぁ、このまま何も分からずサヨナラなんて嫌だしな・・・」

チェリーアイコン

「うん、行こう!」(というかあしどかしてよ・・・ヴァン!)

そうしてやってきた墓の前にはあるものが残されていた・・・。

チェリーアイコン

「これって・・・桜・・・」

ヴァンリートアイコン

「だが・・・桜以外には変化なしか・・・」

ナイトアイコン

「チェリー、ミオを見たのはいなくなる少し前なんだよな・・・」

チェリーアイコン

「うん」

ナイトアイコン

「って事は・・・俺に用事があるっていなくなった時・・・ここに来てたって事だよな・・・」

ヴァンリートアイコン

「私たちに声をかけてきた時にはすでに心を決めていたのかもしれないな・・・」

ナイトアイコン

「・・・?」

ナイトアイコン

「この桜・・・何か少し光ってる・・・」(そもそもこの辺に桜の木なんて・・・)

チェリーアイコン

「あぁ、それはミオが造った桜だよ・・・」

チェリーアイコン

「何かに供える時にミオが必ず造るんだ」

ナイトアイコン

「これ・・・さわっても大丈夫かな・・・」

チェリーアイコン

「大丈夫だと思うけど」

ゆっくりと手を伸ばしナイトが桜を手に取った時だった。

チェリーアイコン

「何かの気配がする・・・私達がさっきまでいた方から・・・こっちに来てる!」

ヴァンリートアイコン

かまえろ、来るぞ」

ナイトアイコン

「あぁ、ここで死ぬ訳にはいかない」

かまえたナイト達の前に飛び上がった黒い影が落下してきた・・・。

ナイトアイコン

「・・・!!」

その着地の衝撃しょうげきは地面に亀裂きれつが入るほどだった・・・。

獣人アイコン

「グルルゥ・・・」

第5話 不穏ふおんな足音 中編(2)

チェリーアイコン

「こりゃまた立派りっぱに育った獣人じゅうじんさんで・・・」(筋肉すご・・・)

ナイトアイコン

「だけど・・・あの筋肉・・・ちょっとうらやましい・・・」

ヴァンリートアイコン

「何を言っている・・・人間のお前にあそこまでの筋肉はいらんだろ・・・あそこまで行ったら終わりだぞ・・・毛深いしな・・・」

ナイトアイコン

「いや・・・別に毛深さは真似したくないけど」

そうコソコソと話ている3人・・・。

獣人アイコン

「アァ?何で初対面の連中にあそこまで行ったら終わりとか言われなきゃならねーんだ?」(そもそも鳥も毛深いだろ・・・)

ヴァンリートアイコン

「ん?傷ついたのか?それは悪かったな」(・・・あの肩の傷は)

と心のまったくこもっていない謝罪をしているヴァン・・・。

獣人アイコン

「・・・」(この鳥・・・)

獣人アイコン

「俺は今・・・、ものすごく機嫌が悪いんだよ・・・」

ヴァンリートアイコン

「ほう・・・、何故なぜだ?」

チェリーアイコン

何故なぜだって・・・ヴァンがあんな事言ったからじゃ・・・」

そう言ったチェリーを見た獣人じゅうじん何故なぜ激昂げきこうしている。

獣人アイコン

「お前を見ると無性むしょうに腹が立つ・・・」

チェリーアイコン

「へ?」

ヴァンリートアイコン

「原因はお前だったのか・・・」

チェリーアイコン

「何で?私・・・何もしてないし!ていうか理不尽りふじんすぎるよ!」

獣人アイコン

「匂いが似過ぎてて腹が立って仕方がない!」

ナイトアイコン

「似てるって・・・何に?」

獣人アイコン

「俺の邪魔じゃまをしやがった紫の髪の小娘にだ!」

チェリーアイコン

「え・・・それってもしかして・・・ミオ?」

ナイトアイコン

「・・・どの辺で会ったんだ?」

獣人アイコン

「お前ら・・・あの小娘の知り合いか?・・・あの小娘の・・・」

そう言った獣人じゅうじんの爪がメキメキっと音を立て伸びていく・・・。

ナイトアイコン

「でも、邪魔じゃまされたって一体何を・・・」

獣人じゅうじんがナイト達の前に現れる少し前・・・。

木を飛び移りながらレイテルに向かっていたミオ・・・。

ミオアイコン

「・・・!」(やっぱり・・・この近く魔族達やつらがいる・・・)

しかし、その場所で目に飛び込んで来たのは・・・何かにおそわれ瀕死ひんしおちいった人間だった・・・。

ミオアイコン

「しっかりして・・・すぐに近くの治療ちりょうできる場所に連れていくから・・・」(この紋章もんしょうは・・・確かレイテルの・・・)

瀕死のレイテル兵士アイコン

「俺は・・・もうダメだ・・・目がかすんであんたの顔も分からん・・・」

瀕死のレイテル兵士アイコン

「だから・・・他の奴を・・・助かりそうな奴を助けて・・・やってくれ・・・頼む・・・」

ミオアイコン

「・・・わかった」(この傷は・・・今の私じゃ治せない・・・)

瀕死のレイテル兵士アイコン

「あ・・・りが・・・」

そう言い安心したように息を引き取った。それを見届け思わず天をあおぐミオ・・・。

ミオアイコン

「他の人を助けて・・・?無茶を言うのね・・・」

ミオアイコン

貴方あなたが最後の1人・・・他の人はもうとっくに・・・」

ミオアイコン

「ごめんなさい・・・私はもう行く・・・目の前の危険ぐらいは無くしておかないと・・・」(近くにいるはず・・・次の犠牲者ぎせいしゃが出る前に・・・)

そう言ってその場を立ち去ろうとしたミオだったが・・・そこへ3体の魔族が姿を現した。

ミオアイコン

「・・・!?」(探さなくてもよかった)

デーモン01アイコン

「何か美味うまそうなガキが増えてるじゃねぇか」

ミオアイコン

「・・・」

デーモン02アイコン

「この顔どっかで見たことあるような・・・」

ミオアイコン

「・・・」

デーモン03アイコン

「何だ?こわくて声も出ないのか?」

ミオアイコン

「・・・違う・・・」

デーモン01アイコン

「まぁ、悪く思うな痛いのなんて一瞬いっしゅん・・・」

そう言った魔族は次の瞬間しゅんかんには消滅しょうめつしていた・・・。

ミオアイコン

「そう、痛いのは一瞬いっしゅんだけ・・・」

ミオアイコン

「私は別に貴方達あなたたちおそれてた訳じゃない」

デーモン03アイコン

「コイツ・・・兄貴を一瞬いっしゅんで斬りやがっただと?」

ミオアイコン

「ただ、話すことが無かっただけ・・・」

デーモン02アイコン

「思い出した!コイツ・・・拠点に1人で乗り込んで来たっていうガキだ」

デーモン03アイコン

「ちょっと待て・・・その拠点って確か・・・」

デーモン02アイコン

「再起不能になったって話だが」

デーモン03アイコン

「こんなガキが1人で拠点を壊滅かいめつさせただと・・・何でそんな奴がこんなところに!」

デーモン02アイコン

「だがこのガキ、手負ておいのはずだ・・・今までいだことのないほど美味うまそうな血の匂いがしてる・・・」

デーモン02アイコン

「その傷を狙えば・・・」

素早く振り下ろされたするどい爪、それを何とか刀で受け止めるミオ・・・。

ギリギリとかたいものがこすれる音があたりにひびいている・・・。

デーモン02アイコン

「へぇ、なかなか頑張るじゃねぇか・・・だが・・・」

デーモン02アイコン

「力じゃ俺の方が上だ!」

そう言いさらに力をかける魔族の圧力に刀がミシミシと音を立てている・・・。

ミオアイコン

「・・・ヒビが!?」

デーモン02アイコン

「ついでに良い知らせだ・・・相手しなきゃならないのは俺だけじゃねーんだよ」

デーモン02アイコン

「おいっそっち側の脇腹わきばらを狙え!コイツは俺がおさえる!」

そのまま後ろの木に押し付けられたミオ、その後方から不気味ぶきみな影が視界に見え隠れしている・・・。

ミオアイコン

「・・・」(!・・・傷が開いた・・・)

デーモン03アイコン

「任せろ!」

後方から容赦ようしゃなく振り下ろされた爪が近くの木ごとぎ払う・・・。

鮮血せんけつに染まる木々・・・おびただしい量の出血だ。

だがその血を流しているのは魔族のものだった・・・。

デーモン03アイコン

「何で俺の爪がお前に刺さってんだよ!」

デーモン02アイコン

「うるせぇ・・・それは俺が聞きてぇわ・・・」

そうこときれた魔族の姿は人間に姿を変えていく。

ミオアイコン

「・・・変異種・・・」(それにしても・・・)

爪が振り下ろされる直前・・・敵の腹部をひざで蹴り何とか拘束こうそくを逃れたミオは爪を振り下ろそうとしていた魔族の足元へすべり込むように回避した、それを再びとらえようと手を伸ばしたことで1体が攻撃の軌道上に入ってしまったことが同士討ち原因だった。

ミオアイコン

「・・・狙ってはなかったんだけど・・・」(何か・・・ひどいことになってる・・・)

ミオアイコン

「・・・」(今まで普通に斬り捨ててた私が思うのなんだけど・・・あれは両方辛い・・・)

ミオは何かを振り払うように頭を左右に振る・・・。

ミオアイコン

「申し訳ないけど・・・」(敵に同情してる場合じゃない、同情なんてしてたらまた何かを亡くしてしまう・・・)

デーモン03アイコン

「キサマ、よくも・・・!」

激昂げきこうした魔族が振り下ろした爪によりパキンっと音を立て忍刀が折れた!だがそのままの状態で背後に回り込んだミオ。

ミオアイコン

貴方あなたを倒すだけなら・・・この長さで十分!」

急所の一撃で倒したミオだったが・・・返り血を浴びた手を見たミオは突然その場にくずれ落ちてしまった・・・。

よく見るとくずれ落ちたミオの手はかすかにふるえている・・・。

ミオアイコン

「・・・リア・・・ごめんなさい・・・」

少しおびえたように何かに謝っているようだ・・・。

しかし、ハッとしたようにしたミオはいきなり巨大な手裏剣しゅりけんを打った!

獣人アイコン

「グルォォ」

そこあったのは肩に手裏剣しゅりけんが刺さり動けなくなっている獣人じゅうじんの姿だった・・・。

その後にナイト達の前に現れたのがその獣人じゅうじんである。

獣人アイコン

「あの小娘・・・魔族の連中を倒したと思ったらいきなり座り込んで・・・様子がおかしくなったと思ったら・・・こっちに変な武器投げてきやがるわ・・・今思い出しても意味が分からん!」

感情に任せて爪を振り下ろす獣人じゅうじん、それをけながらチェリーは言う。

チェリーアイコン

「・・・ミオの様子がおかしく・・・?・・・まずいかも」

ナイトアイコン

「何か心当たりがあるのか?」

チェリーは悲しそうにうなずく・・・。

チェリーアイコン

「だけど、もう少しくわしく聞きたい」

ヴァンリートアイコン

「まぁ、そういうことだから・・・話てもらえるとありがたい」

っとヴァンは笑顔で言ってみた・・・。

第5話 不穏ふおんな足音 後編(1)

獣人アイコン

「どいつもこいつも・・・うるせぇ奴らだな!」

そう言うと獣人じゅうじんは今までより素早く鉄の様にかたい爪をチェリーに振り下ろした・・・。

チェリーアイコン

「!」(けきれない!)

そう思いチェリーが防御ぼうぎょ態勢たいせいをとった直後に横から何かがチェリーを連れ去った。

チェリーアイコン

「ヴァン!」

ヴァンリートアイコン

「お前の体であの爪を受けるのは負荷が大きすぎる・・・」

ヴァンはチェリーをつかんだまま上空で周囲の風を集め獣人じゅうじんに向けて風の刃を放つ・・・。

それをギリギリのところでかわした獣人じゅうじんだったが・・・。

獣人アイコン

「何だアレ・・・けられなかったら上下に体が別れを告げるとこだぞ・・・」(本当に俺の話聞きたいと思ってるのか・・・アイツ・・・)

風の刃により切りかれたように残された地面の後に思わずそうつぶやく。

獣人アイコン

「あの鳥が使った技・・・確かに強力だが・・・その技で舞い上がった砂埃すなぼこりでアイツから俺の姿は見えないはず・・・」

確かに砂埃すなぼこりがあたりに立ち込めている・・・。

謎の声アイコン

「で、どうするんだ?」

獣人アイコン

「こちらから先に鳥の影を見つければ・・・?」

獣人アイコン

「・・・俺は誰と話てる・・・?」

謎の声アイコン

「あ・・・やっと気づいてくれたな・・・1つ言うとしたら・・・ただの砂埃すなぼこりならもっと早く晴れてる」(どっちかと言うと砂嵐に近い・・・)

その声に振り返った瞬間しゅんかん、砂嵐からはじき出された獣人じゅうじん・・・。

ナイトアイコン

「何の邪魔じゃまになったかは知らないけど・・・たとえミオが何もしなくても失敗してた可能性もあるんじゃないか?」

獣人アイコン

「黙れ小僧こぞう!お前に何が分かる!?」

そういかくる獣人じゅうじんの爪を剣で受けるナイト。

ナイトアイコン

「別に何も解らないけど・・・まぁ正直興味無いしな」

獣人アイコン

「!」

チェリーアイコン

「・・・そこ興味持ってあげよう・・・嘘でも良いから・・・」

ナイトアイコン

「俺はあんたが知ってる情報に興味はあるだけで」

ナイトアイコン

「どう考えていようと関係ない・・・話さえ聞かせて貰えれば不必要に戦う気もない」

獣人アイコン

「ふざけるな!人間なんかに2度も・・・」

獣人アイコン

「しかもお前らそもそも話聞きたい態度じゃねーよなぁ・・・さっきから・・・」

獣人アイコン

「だが、確かに素直に話す気もねぇ」

獣人アイコン

「俺に話を聞きたいなら話さざるおえない状況にすることだな!」

そう大声を上げナイトの剣をつかおさえ込んだ獣人じゅうじんはもう一方の爪で勢いよくり上げた。

ナイトアイコン

「力ずくでって・・・多分相当痛いけど本当に良いのか?」

そう言い獣人じゅうじんの爪を受け止めたのは先ほどまで何も持っていなかったはずの手ににぎられた剣だった・・・。

獣人アイコン

「二刀流・・・!?」

その様子を上空から見ていたチェリー。

チェリーアイコン

「いつの間にかナイト両方の手で剣使えるようになったんだね・・・」

ヴァンリートアイコン

「あぁ、アイツ・・・こっそり1人で修行してたからな・・・」(ずっと前から剣の鍛錬たんれん自体もしていた・・・)

チェリーアイコン

「知らなかった・・・」

ヴァンリートアイコン

「フッ・・・お前らしいな・・・」

チェリーアイコン

「バカにしないでよ!・・・でも・・・何でナイトはどうしてそこまで頑張ってるんだろう・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・分からないのか?・・・ますますお前らしいな・・・」

チェリーアイコン

「何か・・・ムカツク!」

その頃・・・地上で組み合っているナイト・・・。

ナイトアイコン

「一応、もう1回聞くけど・・・本当に良いんだな」

獣人アイコン

「アァ?お前、本当にやる気あるのか?」

ナイトアイコン

「・・・仕方ない・・・か」

ナイトアイコン

「悪いけど手加減する技術・・・まだ無いんだよな・・・」

ナイトアイコン

「取りえず死なないでくれよな」

そう言った直後に獣人じゅうじんりつけるナイト、少し動きながらもみ止まる獣人じゅうじんだったが。

獣人アイコン

「速い!?」(本当にさっきと同じ奴か!?)

ナイトアイコン

双刃旋風斬デュアルフウァールウインド

風ををまとった2本の剣で素早く斬りつけるナイト、それをとっさに爪で受けた獣人じゅうじんだったがその強く固い爪をもまとった風が容赦ようしゃ無く切断する・・・交差させた剣から放たれた二刃の風の風圧により後方の木に打ち付けられた獣人じゅうじんの首に剣を突きつけるナイト。

ナイトアイコン

「爪ももう使えない・・・それでもまだ戦う気はあるのか?」

獣人アイコン

「チッ・・・一日に2度もガキに負かされるとはな・・・」(普通、人間が獣人じゅうじん喧嘩けんかうらねぇだろ・・・)

そう言うと獣人じゅうじんは少し苦しそうにしながらも話を始めた・・・。

獣人アイコン

「丁度・・・お前達が話してた小娘も今のお前と同じように刀を突きつけてきた・・・」

そこへヴァンとチェリーも降りたった・・・獣人じゅうじんも話を続ける・・・。

肩に手裏剣しゅりけんが刺さり動けなくなっている獣人じゅうじんに近付いてきたミオ。

ミオアイコン

「!・・・獣人ウェアウルフ?」(どうしてこんなところに・・・)

獣人アイコン

「お前!俺にいきなり攻撃してくるたぁ、良い度胸どきょうじゃねぇか!」

ミオアイコン

「・・・最近この辺りで魔獣まじゅうが人をおそっているとも聞いていたけど・・・貴方あなたおそってるの?」(魔族と見分けがつかない人間が勘違いしてるんだと思っていた・・・)

再び具現化した忍刀を突きつけたずねるミオ。

獣人アイコン

「チッ」(この小娘・・・魔族をあっという間に倒しやがった・・・身動きも取れねぇ・・・)

ミオアイコン

「答えて・・・」

獣人アイコン

「アァ!?、人間が俺から住む場所をうばった・・・だから取り戻しに来た、それの何が悪い!?」

ミオアイコン

「人をおそっても何の解決にもならない・・・次の火種が生まれるだけ」

獣人アイコン

「人間寄りのお前に何が分かる!?見た目だけで俺たちウェアウルフの一族を悪だと決めつけ、魔獣と呼び攻撃してきた人間を許せとでも言うのか!?」

獣人アイコン

「人間ほど欲深き者はいない・・・現に人間は自らの欲望のために同じ人間すらもおそい争い続けている・・・」

ミオアイコン

「・・・」

獣人アイコン

「お前のうわさは聞いていた・・・人間にうとまれ嫌われているにもかかわらず人間に肩入れをしている変わった奴がいると・・・」

獣人アイコン

「だが・・・人間を見てどう思う?一番近くで見て一番人間のみにくさを知っているのは他でもないお前では無いのか?」

ミオアイコン

「・・・確かに・・・どうしようもないくらいおろかしい人間もいる・・・欲望のために他者のことを全く考えない人間・・・でもそんな人間ばかりじゃない・・・」

ミオアイコン

「信じられないくらい人の事ばかり心配する人間もいる・・・」

獣人アイコン

「そんな他人の事ばかり考えてる奴は天然記念物並に珍しい人間だろ!そんな人間そうそういない!」

獣人アイコン

「大半はどうしようもない奴ばかりだ・・・」

ミオアイコン

「・・・貴方あなたが人をおそう理由は分かった・・・人をにくんでいることも・・・だけど1つだけ教えて欲しい・・・」

ミオアイコン

「最近、色々な場所で人をおそう獣が増えている理由に心当たりない?」

獣人アイコン

「最近?急に増えた?今までの人間のツケが回ってきたんだろ?」

ミオアイコン

「そう・・・知らないのね・・・」

そう言うとミオは獣人ウェアウルフに突きつけた刀を引っ込め・・・クルッと背を向けた。

ミオアイコン

「肩・・・ごめんなさい・・・痛かったでしょ・・・」

獣人アイコン

「アァ?お前・・・俺を殺すんじゃないのか?」

ミオアイコン

「・・・何故なぜ?」

第5話 不穏ふおんな足音 後編(2)

獣人アイコン

「俺はお前が守ろうとしてる人間をおそってるんだぞ!?」

その声に背を向けたままミオは答えた。

ミオアイコン

「だって・・・アレうそでしょ?」

獣人アイコン

「ハァ?・・・なに言ってんだお前・・・」

ミオアイコン

貴方あなたは人殺しの目をしてない・・・」

ミオアイコン

「確かに人間をにくんでる・・・それは本当だと思う・・・だけどおそったり殺したりするところまでは行ってない・・・」

ミオアイコン

貴方あなたは心の痛みを知っているから・・・」

ミオアイコン

「でも・・・もし貴方あなたが誰かを殺すような事があれば・・・その時は私が貴方あなたを斬る・・・」

そう言うとミオはその場を立ち去った・・・。

その話を聞いていたチェリー。

チェリーアイコン

「うーん、肩のことはミオが悪かったかな・・・でも他の所・・・何かあったかな・・・」

チェリーアイコン

「私の顔見ていかくるうようなこと無いと思うけど・・・」

ヴァンリートアイコン

「十分・・・おこってもおかしく無いと思うぞ・・・」(お前も感覚マヒしてるぞ・・・肩にアレ刺さったらめちゃくちゃ痛い・・・)

獣人アイコン

「肩以外何も無いだと!?あの小娘!「殺すまでは行ってない」って言ったんだぞ!?」

ナイトとチェリーとヴァンリートアイコン

「???」

チェリーアイコン

「その言葉が悪かったの!?」

獣人アイコン

「あいつは、俺が人間1人殺すこともできない意気地いくじなしって言いやがったんだ!」

ナイトアイコン

「どうやったらそんな風に聞こえるんだよ・・・」(・・・人間どこでうらみかうか分からないな・・・)

チェリーアイコン

「この人・・・大丈夫かな・・・」

ヴァンリートアイコン

「犬の被害妄想ひがいもうそうだ・・・よっぽど辛いことがあったんだろう・・・この事は無かったことにしよう・・・触れないようにしてやろう・・・チェリー」

獣人アイコン

「お前・・・馬鹿にしてるだろ・・・」

そう言われたヴァンはそっぽを向いてつぶやいている。

ヴァンリートアイコン

「バレたようだぞ・・・チェリー」

チェリーアイコン

「当然でしょ・・・」

ナイトアイコン

「・・・大体のことは分かったけど・・・」

ナイトアイコン

「ミオは一体何を謝っていたんだろう・・・」

獣人アイコン

「ア?・・・確か名前みたいだったが・・・」

「ん・・・ふぇ・・・ふぇ・・・」

ナイトアイコン

「・・・ふぇ?」

獣人アイコン

「思い出した!」

ナイトアイコン

「・・・!!」

チェリーアイコン

「・・・!びっくりした・・・」

ヴァンリートアイコン

「で・・・何だったんのだ?」

獣人アイコン

「確か・・・フェダリアって言ってたな・・・」

チェリーアイコン

「やっぱり・・・」(フェダリア・・・)

ナイトとヴァンリートアイコン

「フェダリア?」(って誰・・・)

思わずチラッとチェリーを見る2人・・・。

ナイトアイコン

「間違い無いんだよな・・・」

獣人アイコン

「俺は耳はいいからそこは間違いねぇ・・・」

ヴァンリートアイコン

「さすが犬だな」

獣人アイコン

「焼き鳥にしてやりたい・・・」

2人に見られたチェリーは一瞬いっしゅん体をすくめた、どうやら話していいのか迷っているようだ・・・。

ナイトアイコン

「知ってる・・・みたいだな」

ヴァンリートアイコン

「まぁ・・・元々見当はついていたようだからな」

チェリーアイコン

「・・・」(ミオは話したがらないと思うけど・・・)

ナイトアイコン

「できれば・・・話して欲しい」

ヴァンリートアイコン

「心配せずともお前が話したことは言わない・・・」

チェリーアイコン

「ヴァンの言葉が一番信じられない気がする・・・」

ヴァンリートアイコン

「・・・・・・」

チェリーアイコン

「ナイトは・・・まだミオと一緒に行動したいと思うの?」(ミオ・・・口下手だし)

ナイトアイコン

「何で急にそんなこと聞くんだ?」

不思議そうにたずねるナイト。

チェリーアイコン

「だってあんな形で説明もせずいなくなっちゃったんだよ?」

チェリーアイコン

「もし・・・ミオと行動を共にしなくてもいいって少しで思うなら私は話さない方がいいと思うから・・・」(ミオが何で1人でいなくなったかも分かった気がする・・・)

ナイトは少し時間を置いてからチェリーの目を見ながら言った。

ナイトアイコン

「俺は今でも一緒に旅がしたい・・・と言うよりできれば力になりたい・・・だから」

チェリーアイコン

「ミオと一緒にいれば確実にナイトにも危険がおよぶ・・・それでも一緒に?下手をすれば命を落とすことになるのに?」

ナイトアイコン

「何か放って置けないんだよ・・・どこか死に急いでる気がして・・・」

チェリーアイコン

「確かに・・・ミオは死に急いでる・・・分かっていても私では止めることもできないくらいに」

そんな会話をしている最中さなか、首に剣を突き付けられている獣人ウェアウルフの声がひびいた。

獣人アイコン

「おい!小僧こぞう!手に力入りすぎだ!俺の首が斬れる!」

その声にハッとしたナイト。

ナイトアイコン

「あ・・・悪い・・・つい」

獣人アイコン

「たく・・・うっかり殺されるとこじゃねーか」

獣人アイコン

「お前・・・本当にあの小娘の事ばかり気にしてるな・・・そんなに好きなのかぁ?」

そう言われたナイトはおどろいたように・・・。

ナイトアイコン

「好き??!・・・うーん・・・どうなんだろうな・・・ただ放って置けないだけなんだけど・・・」

獣人アイコン

「・・・そういうの好きって言わないのか・・・?」

しかしそれ以上におどろいていたのはチェリーだった・・・。

チェリーアイコン

「え!?ナイト・・・ミオの事・・・好きだったの!?」

獣人とヴァンリートアイコン

「・・・」(・・・気づいてなかったのか・・・?)

獣人アイコン

「お前・・・本当にあの小娘と契約けいやくしてるのか・・・」

ヴァンリートアイコン

「まだ・・・気づいていなかったのか・・・流石だな・・・」

チェリーアイコン

「うるさい!きっと、きっとミオも恋愛とかうといから気付いてないもん・・・私だけじゃないもん・・・」

ヴァンリートアイコン

「お前・・・そのね方おかしいぞ・・・」

ナイトアイコン

「と・・・取りえずその話は気にしなくていいから・・・」

ナイトアイコン

「そろそろ何があったのか教えて欲しいんだけど・・・」(何かめちゃくちゃ脱線したし・・・)

チェリーアイコン

「・・・」

チェリーは少し悩んだがゆっくりした口調で話し始めた・・・。

チェリーアイコン

「あれは・・・確か一年ぐらい前かな・・・・・・」